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東京地方裁判所 昭和48年(行ウ)141号 判決

原告 圭自動車販売株式会社

被告 東京防衛施設局長 ほか二名

訴訟代理人 岩渕正紀 村長剛二 ほか二名

主文

一  原告の被告東京防衛施設局長及び被告防衛施設庁長官に対する訴をいずれも却下する。

二  原告の被告国に対する請求を棄却する。

三  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求める裁判

一  請求の趣旨

1  被告東京防衛施設局長に対する主位的請求及び被告防衛施設庁長官に対する請求

原告が昭和四六年六月三〇日付でした日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(以下「地位協定」という。)一八条一〇項に基づく損害賠償請求調停申請に対する被告東京防衛施設局長及び被告防衛施設庁長官の不作為はいずれも違法であることを確認する。

2  被告東京防衛施設局長に対する予備的請求

被告東京防衛施設局長が昭和四八年一〇月一一日付でした原告の昭和四八年九月七日付の地位協定一八条一〇項に基づく損害賠償請求調停申請の受理拒否処分を取消す。

3  被告国に対する請求

被告国は、原告に対し五七、五三二、四六二円とこれに対する昭和五〇年四月二三日から支払ずみまで年六分の割合による金員を支払え。

4  訴訟費用は被告らの負担とする。

5  右3につき仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

(本案前の答弁)

1 主文第一項と同旨

2 訴訟費用は原告の負担とする。

(本案の答弁)

1 原告の被告らに対する請求をいずれも棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

3 請求の趣旨3につき仮執行宣言を付す場合の担保を条件とする仮執行免脱宣言

第二当事者の主張

一  請求原因

1  当事者の地位

原告は、自動車及び自動車部品の販売、整備を主たる業とする会社であり、被告東京防衛施設局長(以下「被告局長」という。)及び被告防衛施設庁長官(以下「被告長官」という。)は、いずれも被告国の行政機関であり、その公権力の行使にあたる公務員である。

2  原告とアメリカ合衆国との間の民事紛争

原告は、別紙記載のとおり、昭和四五年三月三一日付で原告がアメリカ合衆国と締結した在日アメリカ軍基地におけるガレージ役務契約に関し、昭和四六年四月ころ同国との間に民事紛争を生じ、同国の右契約の債務不履行により、合計五七、五三二、四六二円の損害を被つた。

3  原告の調停申請

そこで原告は、前記民事紛争の円満解決を求めて、昭和四六年七月二日、被告局長に対し、同年六月三〇日付調停申請書により地位協定一八条一〇項に基づく損害賠償調停申請をした。

4  被告局長及び被告長官の不作為

被告長官は、地位協定の前記条項に基づき定められた「特需契約から生ずる紛争の調停付託手続等に関する総理府令」(昭和二九年七月二一日総理府令第五七号。以下「総理府令」という。)三条、六条、一二条の定めるところにより、本邦に在留するアメリカ合衆国軍隊に関連した特需契約についてなされる地位協定に基づく調停申請を受理し、その内容を審査し、実情を調査し、さらに被告長官に意見を具申するなどの義務を負うものであり、被告長官は、総理府令一二条ないし一四条の定めるところにより、受理された調停事件及び被告局長の意見を審査し、現地調査をし、さらに調停案を作成するなどの義務を負うものである。

ところが、被告局長及び被告長官(右被告両名を以下単に「被告局長ら」ともいう。)は、原告の前記調停申請に対し、前記の義務に反し今日に至るまでその内容の審査、実情調査、意見の具申、調停案の作成などをなすことをまつたく怠り、右調停申請を放置しており、その不作為が違法であることは明白である。

5  被告局長の調停申請の受理拒否処分

原告は、被告局長に対し昭和四八年九月七日付で地位協定一八条一〇項に基づく調停申請書(この書面に基づく調停申請を以下「第二次調停申請」ともいう。)を提出したところ、同被告は、同年一〇月一一日付で右申請の受理を拒否した。

ところで原告の提出した右調停申請書は、原告の前記昭和四六年六月三〇日付調停申請(以下「第一次調停申請」ともいう。)にかかる調停手続(以下これを「本件調停手続」ともいう。)の続行要求及び調停準備の書面として理解されるべきであるが、仮に、本件調停手続が当時係属していなかつたとすれば、右は新たな調停申請であつて被告局長が原告の第二次調停申請の受理を拒むことは許されない違法なものであつて、右処分は取消されるべきである。

6  原告の損害と被告国の賠償責任

(一) 原告は、被告局長らの前記4の違法な不作為により、合衆国に対する民事上の損害賠償請求権の行使を今日までまつたく実現することができず、また、合衆国は調停による紛争の解決を拒否している。

したがつて、原告は、被告局長らの右違法な不作為により、合衆国から調停の結果当然に取得することができたはずである前記損害金五七、五三二、四六二円の回収を著しく困難にさせられたことにより、右同額の損害を被つたものである。

(二) 仮に、原告の第一次調停申請にかかる調停がもはや係属していないとすれば、右調停手続が終了したのは被告局長らが総理府令の規定をまつたく知らず、原告に対し以下(1)ないし(3)のとおり誤つた教示などをして原告に右調停が係属していると誤信されたことにより、原告が所定の手続をとらなかつたためであり、その結果原告の調停による権利救済の途は断たれたものであつて、したがつて原告は被告局長らの右違法行為により、合衆国から回収できたはずの前記損害金五七、五三二、四六二円と同類の損害を被つたものである。

(1) 原告は、昭和四六年七月中旬ころ、前記民事紛争に関する合衆国軍隊の契約担当官の決定があつた旨報告したが、その際本来ならば、総理府令の定めるところにより本件調停手続の続行を求めるためには、所定の期間内に右決定に対し合衆国の機関である軍事契約訴願委員会に訴願申立をしたうえでその手続の停止を求め、さらに文書により調停続行を申立てることが必要であり、逆に本件調停手続の続行を求めないならば、文書により調停放棄をすべきであることを教示すべきであつたにもかかわらず、なんらの教示もしなかつた。

(2) 原告が昭和四六年八月ころ、契約担当官の右決定に対し訴願をした旨報告した際も、前記(1)と同様になんらの教示もせず、かえつて「それはよかつた」「調停の方もやります」などと原告に答え、原告がなんらの手続をしなくても本件調停手続は続行されるものと原告に誤信させた。

(3) 原告に対し(イ)昭和四六年一一月ころ、第一次調停申請にかかる調停申請書が不備であるから訂正するよう教示し、また、(ロ)昭和四六年末ころ、「訴願手続がおもわしくないときは調停手続を進めるから安心せよ」と答え、すでに終了している本件調停手続が当時も係属していると原告に誤信させた。

(三) 被告局長らの原告に対する前記の不作為あるいは誤つた教示は、同被告らがその職務を行なうについて故意または過失により違法になされたものであるから、被告国は、国家賠償法一条に基づき、原告の被つた前記損害金を賠償すべき義務がある。

7  よつて原告は、被告局長に対する主位的請求及び被告長官に対する請求として原告の第一次調停申請に対する被告局長及び被告長官の不作為がいずれも違法であることの確認、被告局長に対する予備的請求として原告の第二次調停申請に対する同被告の受理拒否処分の取消、被告に対し、前記損害金五七、五三二、四六二円とこれに対する本件訴状送達の日の翌日である昭和五〇年四月二三日から支払ずみまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求める。

二  被告局長及び被告長官の本案前の答弁の理由

1  原告の請求の趣旨1の訴について

原告は、地位協定一八条一〇項に基づく第一次調停申請に対する被告局長らの不作為が違法であることの確認を求めているが、右の訴は、以下述べるとおり不適法であるから却下を免れない。

(一) 不作為の違法確認の訴は、行政庁が私人から法令に基づく申請あるいは不服申立を受け、相当の期間内に、その申請に対応する処分その他公権力の行使に当たる行為あるいは不服申立に対応する裁決、決定その他の行為をなすべきであるにもかかわらずこれをしない場合に、その行政庁の不作為が違法であることの確認を求める訴であるところ、原告の申請にかかる本件調停手続は、地位協定一八条一〇項にいう合衆国軍隊によるまたは合衆国軍隊のための資材、需品、備品、役務及び労務の調達に関する契約(以下「特需契約」という。)から生ずる契約上の紛争を、合衆国軍隊を代表する契約の一方の当事者である合衆国軍隊の契約担当官と特需契約請負業者双方の友諠的な合意により解決するための手段であり、地位協定二五条に基づく合同委員会の分料機関として設置された契約調停委員会(以下「調停委員会」という。)がそのあつせんにあたるものである。

調停委員会は、日本国政府及び合衆国政府により任命される各四名計八名の委員により構成され(契約調停委員会とその調停手続に関する覚書第一部二)、契約から生ずる意見の不一致、運用上の問題及び潜在的紛争に関して調停を行なうための有効な手段を契約の当事者に提供し、かくしてそれらの問題が正規の紛争にまで発展する可能性を減少せしめることを目的とし(同第二部一)、特需契約より生ずる紛争に関し契約当事者の一方からの申請に基づき調停を実施し、米国軍隊の調達に関する苦情の処理にあたる(同第一部三a、b)ものである。そして、調停委員会が行なう調停は、特需契約の紛争条項に基づいて契約当事者が有する権利の行使を妨げるものではなく、右権利確保のための提訴手続を免除するものでもない(同第一部四b)とされ、また、調停委員会は紛争の調停のため勧告文を作成するが、同勧告文は契約当事者双方の受諾がなければなんら効力を生じない(同第二部三h)とされている。

このように、特需契約から生ずる紛争の解決手段としての調停委員会による調停手続は、抗告訴訟の対象たる公権力の行使に当たる行為には該当せず、また不服申立に対応する行政庁の裁決、決定その他の行為にも該当しないから、不作為の違法確認の訴の対象とはなりえないものというべきである。

のみならず、被告局長らの右調停手続における調停申請書の受理及び調停委員会に進達する行為(総理府令一二条、一三条)は、行政機関内部の行為であつて、それについての不作為の違法確認を求めることはできないものというべきである。

(二) 仮に、地位協定に基づく調停委員会における調停手続、特に右調停手続における被告らの前記の行為が、抗告訴訟の対象となるとしても、原告の申請にかかる本件調停手続は、すでに終了したものであつて、不作為状態は存しないから、不作為の違法確認訴訟における訴の利益はすでに消滅したものというべきである。すなわち、

(1) 特需契約から生ずる紛争の救済制度としては、一般の民事訴訟における司法的救済手続は別として、特需契約より生ずる事実に関する紛争に関し、特需契約の内容をなす一般条項に基づく行政的救済制度として、契約担当官の決定とその不服申立としての訴願手続が定められている。すなわち、特需契約の条項により、当該契約より生ずる紛争は契約担当官により裁定され、その決定書は特需契約請負業者に送達される。そしてその決定に不服のある者は決定書送達後三〇日以内に契約担当官を通じ、合衆国の行政救済機関である軍事契約訴願委員会(以下「訴願委員会」という。)に訴願を提起することになる。そして訴願委員会の裁定により当該契約上の紛争は確定するのである。

(2) このように、特需契約から生ずる紛争の行政的解決手段については、訴願制度と調停制度が認められているのであるが、両制度の比較から明らかなように、調停制度はあくまで当該紛争の本来の行政救済手続である訴願制度の補助的解決手段というべきである。

すなわち、特需契約より生ずる紛争に関し、調停の申請は原則として契約担当官の決定書の交付前に行なうものとされ(総理府令四条)、かつ特需契約請負業者より調停申請がなされた場合も、契約担当官の決定があつた場合には、右決定に不服があれば訴願を提起し、その上で所定の期間内に訴願手続停止の申請をしてその許可を受け、かつすでに係属している調停手続を続行する旨の意思表示をあらためてなさねばならず(同令八条二項)、調停申請前に契約担当官の決定があつた場合は、当該決定に対する不服申立を訴願委員会に提起し、所定の期間内に訴願委員会において前記の手続停止を申請しその許可を得てはじめて調停申請が可能となる(同令五条)のである。したがつて、訴願委員会の訴願手続の一時停止の許可がない場合、あるいは許可がなされても所定の一五日以内に調停の申請または調停手続の続行の意思表示をしない場合は調停手続に付することはできず、あるいは、すでに係属する調停手続は当然終了するものといわねばならない。

(3) これを本件についてみるに、原告の締結した特需契約にも前記(1)の一般条項が規定されているものであるところ、原告は、昭和四六年七月二日立川防衛施設事務所長を通じ被告局長に調停申請書を提出したが、昭和四六年七月一六日当該紛争に関する契約担当官の決定があり、同日決定書が原告に送達された。これに対し原告は、同年八月一一日訴願委員会に訴願を提起し、同年一〇月一三日訴願委員会において正式に訴願事案として審査が開始された。しかるに、原告は右訴願の日より所定の一五日以内に審査の一時停止の申請を行なつていないのであるから、本件調停手続の続行の意思表示もないことになり、すでに係属している本件調停は右訴願の日より所定の一五日を経過した昭和四六年八月二六日に当然に終丁したものといわねばならない。

(4) 仮に本件調停手続がなお係属していたとしても、昭和四八年三月二一日訴願委員会において訴願の裁決がなされ、原告に対し同年四月三日裁決書の交付があり、本件特需契約より生じた紛争は右訴願裁決の確定により、行政上の救済手段として終丁したものというべく、当事者の合意に基づく調停制度は、もはや訴願裁決の確定により調停による解決の余地はないのであるから当然に終了したものといわねばならない。

なぜなら、契約担当官は、自己の決定を再審査する権限を有する訴願委員会の裁決に拘束されるものと考えられ、訴願委員会の裁決がなされた以上は当事者の話し合いを前提とする調停の余地はなくなり、調停委員会が調停案を示しても無意味だからである。したがつて右の場合は、調停手続は調停不成立として当然終了するものと解すべきである。

以上いずれにしても、本件調停手続は終了しているのであつて、被告局長らの不作為は存在しないといわなければならない。

2  原告の請求の趣旨2の訴について

原告は、予備的請求として、原告の第二次調停申請に対する被告局長の昭和四八年一〇月一一日付受理拒否処分の取消を求めているが、右調停申請にかかる申請書は、被告局長がこれを受理したものではないうえ、右申請書の内容は第一次調停申請にかかる調停と同一紛争に基づくものであり、新たな申請とはみられないものであつた。しかるに、第一次調停申請にかかる本件調停手続は、前記1(二)主張のとおり当時すでに終了していたものであり、したがつて被告局長は、原告に対し昭和四八年一〇月一一日付回答書により、本件調停手続が終了していることの通知、あるいは原告の第一次調停申請が総理府令八条二項の手続を欠き、また訴願委員会の裁決により調停続行が不可能となつたことを理由とする調停手続打切の通知をしたものであつて、右回答は、いずれも正当なものであるが、これにより原告の法律上の地位になんら変動を及ぼすものではないのであるから、取消訴訟の対象たる行政処分とはいえないものである。

したがつて、原告の予備的請求にかかる訴も不適法である。

三  本案前の答弁の理由に対する原告の反論

1  本案前の答弁の理由1(一)について

(一) 調停委員会による調停手続は、特需契約から生じた合衆国とわが国の特需契約請負業者との間の民事紛争を、当事者の互譲により文字どおり司法的に解決することを目的とするものであつて、私人に対し特定行為を命令し、あるいはその法的地位を形成するなどのいわゆる行政行為に属するものということはできないのであるが、しかし他方、民事紛争に関してわが国の国家機関が関与して行なうものである以上、これを司法権力作用に属するものとして、公権力の行使に該当するものと解して妨げないというべきである。

すなわち、特需契約に関する調停委員会の調停は、前記のとおり地位協定一八条一〇項に基づくものであるが、右条項は、わが国の司法権が合衆国に対しては及ばないところから、私的契約である特需契約において本来ならば平等な当事者たるわが国の特需契約請負業者の裁判を受ける権利が、実質的に損われてしまう(合衆国において訴訟することは事実上不可能である。)ことのないように、わが国と合衆国によつて協定されたものであつて、したがつて、右の調停は日米両国の司法権にその淵源があるというべきであつて、合衆国は右調停の範囲内でわが国の司法権に対する免責特権を放棄したともいえるものである。そして、調停委員会は、条約によつて合意された紛争解決機関として、契約当事者の本国裁判所に代わつて司法的公権力を行使する国際機関として認識されるべきであつて、わが国の国内法である民事調停法に基づく調停が、当事者に対してなんらの強制力を有するものではないにもかかわらず、司法権の権力行使作用であることは何人も否定しえないのと同様に、当事者の一方が合衆国という外国国家であるというだけで、他に一般の私的法律関係と異なるところのない特需契約をめぐる紛争について、調停委員会の行なう調停を司法権力作用と解して何ら不都合はないのである。

そうであるとすると、被告局長らが総理府令の定めるところによりなすべき義務を負う行為(請求原因4)は、調停委員会がその司法権力作用の権能の一部である調停準備行為としての調停申請の受理あるいは調査等の権能を、日本国政府に付与したことによつて、わが国の行政機関たる右被告両名の管掌事項とされたのであり、司法権的な判断作用と密接不可分な行為としての行政事務的本質を有するものであつて、国家の優越した地位にその基礎をおくものであるから、これを抗告訴訟の対象たる処分に該当するものと解すべきことは当然である。

被告局長らは、総理府令に基づき調停申請を受理し、審査するなどの義務を負うことにより、調停申請した特需契約請負業者と一定の公法上の法律関係を維持することになるのであり、右の法律関係がわが国国有の行政権力関係ではなく、日本国政府を受託者とする日米両国の司法的権力関係であるとしても、その実体は右被告両名が行なう通常一般の権力行使となんら異なるところがないのであつて、その違法な不作為を裁判所が看過することは許されないのである。

(二) なお、仮に被告局長らの本件の不作為が抗告訴訟の対象にならないとすれば、調停委員会による調停の途が違法に奪われた本件のような場合、他の救済手続が地位協定等に規定されていないことにより、原告の救済の途は事実上閉されてしまい、その不利益は著しいものであつて、正義に反するものといわなければならない。

2  本案前の答弁の理由1(二)について

被告局長及び被告長官主張の事実(本案前の答弁の理由1(二)(3)及び(4))のうち、原告が締結したガレージ役務契約に契約担当官の決定とこれに対する訴願についての一般条項が規定されていたこと、本件において契約担当官の決定があり、これに対し原告が訴願を提起し、訴願委員会の裁決がなされた経緯、及び原告が総理府令八条所定の手続をしなかつたことについては、いずれもこれを認めるが、本件調停手続は、以下のとおり、なお適法に係属しているものであつて、終了してはいないというべきである。

(一) 被告局長らは、訴願委員会の裁決により当該契約上の紛争が確定すると主張するが、訴願委員会は合衆国軍隊の機関であり、その構成員も合衆国国民であつて、当該契約の一方当事者である合衆国軍隊と利益を共通にするものであるから、公平な判断をおよそ期待しえない機構といわなければならない。したがつて、訴願委員会の判断である裁決に確定力を付与することは、到底許されないというべきである。

(二) 次に、被告局長は、調停手続は補助的手段にすぎず、主たる手続は訴願制度であると主張するが、これは誤つている。

すなわち、地位協定は、調停手続のみに触れ、訴願手続については何も触れていないが、これは訴願委員会が合衆国軍人のみによつて構成されており、特需契約に関する紛争の解決機関としては適当ではなく、あるいは日本国民の反発を買うだけと判断されたことによるのであつて、特需契約に関する紛争の解決機関としては、調停が主流であることは、ここからも読みとれる、また、被告局長ら主張の「覚書」第二部二bによれば、契約担当官は、調停申請がなされたことを知つたときには、調停委員会が調停を行なうまで決定書通知を停止する旨定められているのであつて、ここにも、できるだけ調停手続で解決するという調停を基本的解決の手段とする考え方が明らかである。

(三) また、総理府令八条二項に規定する訴願手続の一時停止の許可がないこと、あるいは許可があつても調停続行の意思表示がなされないことにより、すでになされた申請にかかる調停手続が終了すると解することは、以下のとおり失当である。

まず、特需契約請負業者が調停続行を希望しているにもかかわらず、訴願委員会の一方的都合により訴願手続停止の許可がなされないときに、これを理由に調停が続行できず、あるいは調停が終了するなどと論じることはおよそ許されない。

次に調停が続行できず、あるいは調停が終了するというのは、実質上調停申請の取下に相当するのであるから、総理府令八条一項、三項に定めるとおり、文書による明確な調停不続行の意思表示のない限り、単に調停続行の意思表示のないことを理由に軽々にこれを認めてはならないというべきである。

そして、本件において原告が文書による調停不続行の意思表示をしたことはまつたくないのであるから、本件調停手続が終了するということはありえないといわなければならない。

(四) さらに、原告が自己の権利保護に必要な本件調停手続を続行させるため、総理府令所定の手続をとらなかつたのは、請求原因6(二)主張のとおり、被告局長らが総理府令の規定を知らなかつたため原告に対し当然なすべき教示を怠り、かえつて誤つた教示をしたことに起因するものであつて、右のような事態となつたことについて責任を負うべき右被告両名が、総理府令を根拠として本件調停手続の終了を主張することは、正義に反するものであつて、許されないといわなければならない。

3  本案前の答弁の理由2について

法令の定めにより一定の申請を受理すべき義務を負う行政庁は、その実体審査に入る前にすべて申請を受理し、しかる後に棄却その他の処分をすべきであつて、申請の受理を拒むこと自体は許されない。

なお、総理府令四条の調停申請の期間制限に関する規定は、特需契約請負業者の調停申請権を省令段階の法規が奪うものであつて、到底有効ということはできない。仮に右規定が一般的には無効とはいえないとしても、原告と合衆国との民事紛争の実体、あるいは被告局長らの前記の誤つた教示等に照らして、本件について右規定を適用することは許されないといわなければならない。

四  原告の反論に対する被告局長及び被告長官の再反論

1  原告の反論1について

原告は、合衆国政府とわが国の特需契約請負者との間の特需契約に関する紛争を解決するための手段である調停委員会を司法的機関と理解し、日本国における調停委員会のあつせん手続を司法的公権力の行使として捉えているもののようであるが、これはまつたく調停委員会及びその手続を誤解しているものというべきである。

調停委員会は前記のとおり地位協定二五条の規定に基づき設置された合同委員会の分科機関として設けられたものであり(地位協定一八条一〇項、総理府令一条、二条)、この種の紛争について日本国政府と合衆国政府との間の単なる協議機関として設置されたものであつて(地位協定二五条)、原告の理解するごとき司法的公権力を行使する機関として認識されるべきものではない。同委員会において日米両委員が協議し、合意したところに基づいて勧告文を作成するとしても、その勧告は契約当事者に対し強制力はなく、契約当事者双方の受諾がなければなんら効力が生じないことは、被告がすでに主張したところであり、仮に右の勧告を両当事者が受諾したとしても、その効力は両当事者間における合意としての効力として認められるにすぎず、調停委員会は勧告に対する強制力はもたないのである。

また、原告主張のように、被告局長らがなすべき義務を負う行為が司法処分であるとするならば、それは行政処分ではないのであるから、抗告訴訟の対象とならないことは当然である。

なお、原告は、本件訴訟が許されなければ日本国内における救済の途が閉されてしまうと主張するが、ことは合衆国がわが国の裁判権に服するかという治外法権の問題であり、裁判権が存在することを前提とする司法救済の問題ではないのである。そして、国際法上、国家は他の国家の裁判権に対し治外法権を有すると解されている。原告の契約の直接の相手方である契約担当官はアメリカ合衆国の機関であるから、本件契約上の紛争に関する裁判権をわが国は有しないのである。

2  原告の反論2(一)について

原告は、訴願委員会が合衆国軍隊の機関であるということにより、その裁決により当該契約上の紛争が確定することは不当であると主張する。

しかし、訴願委員会は、合衆国の国防憲章に基づいて国防省に設置され、合衆国軍隊と特需契約請負業者との間の紛争を処理する権限を有する行政機関であるところ、行政的救済制度として特需契約の内容をなす一般条項に基づいて訴願の手続が設けられていることは、被告がすでに主張したところであり、訴願委員会の手続が行政的救済制度として設けられているということは、特需契約にかかる紛争を直ちに司法手段による解決に委ねるよりは、司法的救済制度とは別個に、まず行政的に救済制度を設けその紛争を簡易迅速に解決するようにすることが当事者双方にとつて経済的にも事務手続的にも便利であると目されるからであつて、それが合衆国国防省の機関として設けられ、その機関の裁決によつて行政的には確定するものであるとしても、それは日本における行政救済機関が原則として処分庁または直近上級行政庁の機関によつて審査されるのと制度的にはまつたく同様であつて、なんら不当ではないところである。

3  原告の反論2(二)について

原告は、調停手続が主たる紛争解決手段であり、訴願はむしろ補助的なものであるかのように主張するが、右主張は以下のとおり失当である。

すなわち、本件契約においては、その一般条項として、特需契約請負業者は、この契約に関する紛争について契約担当官の決定書が送付されたときはその受領の日の後三〇日以内に訴願委員会に訴願できること、また、訴願委員会による裁定が行政的救済方法においては確定的なものとなることが定められている。原告は右条項を了知し、合意して本件契約を締結していたものである。

また、すでに述べたように訴願手続は、合衆国政府機関である国防省に合衆国の法規である国防省憲章によつて設けられたものであり、他方、地位協定に根拠をおく調停手続をなす調停委員会は、あくまでも右の訴願手続による裁決前における当事者双方による紛争解決のための協議機関にすぎない。そして、調停委員会による紛争の調停手続は、行政救済制度たる訴願手続の存在を予定して制度化されたものであつて、原告の主張は失当である。

4  原告の反論2(三)について

原告は、訴願の一時停止の許可がないこと、あるいは許可があつても調停の続行の意思表示のないことをもつてただちに調停手続ができず、あるいは当然終了すると解することは誤りであると主張する。

しかし、これは総理府令八条の解釈を誤つたものである。すなわち、総理府令八条一項は特需契約請負業者が調停の申請を行なつた後契約担当官からの決定書を交付された場合に調停の続行を希望するか否かの意思表示を行なわなければならないことを定め、同条二項で調停続行を希望する場合の手続を、同条三項で調停続行を希望しない場合の手続を定めている。同条三項によれば調停不続行の意思表示は決定書受領の日後三〇日以内に行なわなければならない。したがつて同条二項の調停続行の意思表示もなさず、かつ同条三項の意思表示もなさずして決定の受領後三〇日を経過した場合は、特需契約請負業者の調停不続行の意思表示はなくとも、調停は当然に終了するものとすべきである。もし原告のような解釈をすれば、総理府令八条三項は不要となり、同項で三〇日の期間を定めた趣旨を無意味とすることになる。

5  原告の反論2(四)について

原告は、被告局長らの誤つた教示などにより、本件調停手続の続行を不可能にされたと主張する。

しかし、原告主張のような事実がまつたくないことは、後記五2(一)の被告らの主張のとおりであつて、原告の主張は失当である。

五  請求原因に対する被告らの認否及び主張

1  請求原因に対する認否

(一) 請求原因1のうち原告に関する部分は不知、その余は認める。

(二) 同2のうち、原告が合衆国軍隊とその主張する特需契約を締結したこと、合衆国軍隊が、右契約について昭和四六年四月二一日付で解約通知をしたことは認めるが、その余は不知。

(三) 同3は認める。

(四) 同4のうち、被告局長及び被告長官が原告主張の義務を負つていることは認めるが、右被告両名の不作為が違法であるとの原告の主張は争う。

(五) 同5のうち、第二次調停申請にかかる調停申請書が第一次調停申請にかかる本件調停手続の続行要求及び調停準備の書面であることは認めるが、原告主張の行政処分の存在を含めその余の原告の主張は争う。

(六) 同6(一)のうち、原告の損害賠償請求権が実現されないこと、合衆国が調停による紛争の解決を拒否していることは不知、その余については争う。

(七) 同六(二)冒頭部分のうち、本件調停手続が係属していないことは認めるが、その余は争う。(1)のうち原告から契約担当官の決定があつた旨報告がなされたことは否認し、その余も争う。(2)の事実も否認する。(3)のうち、(イ)の事実は認めるが、(ロ)の事実は否認する。

(八) 同6(三)は争う。

2  被告らの主張

(一) 事実上の主張

原告は、被告局長及び被告長官の違法な不作為あるいは誤つた教示について主張するが、以下のとおりいずれもそのような事実はなく、原告の主張は失当である。

(1) 違法な不作為について

本件調停手続がすでに昭和四六年八月二六日に終了したものであると解すべきことは、前記二1(二)(1)ないし(3)のとおりであるところ、右の調停申請に対する被告局長の対応の経緯は次のとおりであつて、被告局長らになんら違法な不作為はない。

すなわち、昭和四六年七月二日原告から本件調停申請書の提出を受けた立川防衛施設事務所では、右申請書を、同日付で業務課長名事務連絡表をもつて東京防衛施設局調達協力課長に、また、同月二一日付で立川防衛施設事務所長名公文書で被告局長あてに送付した。同月二二日右申請書の送付を受けた被告局長は、この申請書に(1)損害賠償対象物件が判然としない(2)損害賠償額が不明である(3)損害賠償のみを主張しているのか業務の続行を希望しているのか不明であるなどの不備があつたので、立川防衛施設事務所長を通じ数回にわたり原告に照会したが明確な回答は得られなかつたので、さらに立川防衛施設事務所長を通じ昭和四六年一一月一五日原告あて「米軍との契約から生ずる紛争の調停方委頼に関する連絡について」の文書をもつて右内容を明らかにするよう要求するとともに、所定の手続に従つて調停申請書を提出するよう通知した。なお、被告局長が、契約担当官の決定のあつたこと及び原告の訴願委員会への訴願の提起があつたことを知つたのは昭和四六年一一月三〇日であり、右連絡文書発出の時点においては、これらの事実を了知していなかつたものである。

したがつて、以上のとおり被告局長が調停手続を進めるための準備を行なつている間に、前記のとおり原告の行為に起因して調停手続が終了してしまつたものであり、被告局長及び被告長官が原告の調停申請を違法に放置していたということはできないのである。

(2) 誤つた教示について

被告局長が、契約担当官の決定がなされ、その決定に対して原告が訴願委員会に訴願をしたということを知るに至つたのは、前記のとおり昭和四六年一一月三〇日である。これに対し、被告局長らが昭和四六年七月中旬ころ及び同年八月ころ契約担当官の決定あるいは訴願の提起について原告から報告を受けた事実はないのであるから、この際に誤つた教示を行なつたとか、なすべき教示を怠つたとかいうことがありうるはずがない。また、被告局長は、昭和四六年一一月一五日の前記連絡文書により調停申請書提出方を原告に対し連絡した当時、前記のとおり、決定あるいは訴願の事実を知らなかつたのであるから、右連絡をもつて誤つた教示ということはできないのみならず、調停手続は客観的にみれば当時すでに終了している。さらに、昭和四六年末ころ「上訴手続が思わしくないときには、調停手続を進めるから安心せよ」と教示した事実もない。

(二) 法律上の主張(損害賠償請求について)

(1) 原告は、国家賠償法一条に基づき被告国に対し損害賠償を求めているが、本件は右条項により損害賠償を請求することができないものである。

なぜなら、右条項は、公権力の行使にあたる公務員の不法行為により生じた損害につき国に賠償の義務を課したものであるが、ここにいう「公権力の行使」とは、国または公共団体の優越的な意思の発動たる作用を意味するものと解されるところ、地位協定一八条一〇項に基づく調停手続は、前記二1(一)のとおりであつて、右のような作用ということはできないものであり、これに関する被告局長らの行為をもつて右条項にいう「公権力の行使」にあたるということはできないからである。

(2) 原告は、被告局長らの違法な不作為あるいは誤つた教示により、原告が調停手続により合衆国より支払を受けえたと思われる五七、五三二、四六二円の回収が著しく困難となり、同額の損害を被つているものであると主張するが、原告にこのような損害が発生しているとはいえない。なぜなら、仮に調停手続が行なわれたとしても、そこで作成される勧告文において原告の主張が容れられるか否かは不明であり、さらに前記のとおり、この勧告文は、相手方たる契約担当官に受け入れられなければなんらの効力も生じないものである。したがつて、このような調停手続が不能となつたことをもつて、原告が調停手続において請求しようとしていた金額と同額の損害が発生したとする原告の主張はまつたく失当である。また、調停手続が不能となつても、原告は、合衆国を被告として民事訴訟により損害の賠償を求めることができるのであり、この点からみても原告主張のような損害が発生しているとはいえないのである。

(3) 仮に原告主張のような損害が発生し、被告国が損害賠償義務を負うに至つたとしても、原告の右損害賠償請求権はすでに時効により消滅しているものである。

前記のとおり、調停手続は昭和四六年八月二六日に終了したものであるから、損害の発生は同日であり、また、被告局長は、右調停手続の終了につき、同年一二月一八日防衛施設庁担当官を通じて原告に通知している。よつて、原告は同日、損害の発生及び加害者を知つたものといわなければならない。したがつて原告の右損害賠償請求権は民法七二四条によりこの日から三年を経過した昭和四九年一二月一八日時効により消滅したものであり、被告国は、昭和五一年四月二七日の本件口頭弁論期日においてこれを援用する。

六  被告らの主張に対する原告の反論

1  法律上の主張(1)について

国家賠償法一条にいう「公権力の行使」とは、その現代的意義においては公務員性を意味するにすぎない。優越的意思主体としての作用に限定するならば、救済の途を狭めることになつてしまうからである。もつとも、本件で問題にしている被告局長らの不作為は、前記のとおり同被告らの優越的地位に基づく行為に関するものと解すべきである。

2  法律上の主張(2)について

原告主張の損害は、本件調停手続において抽象的に実現可能であつたわけであるから、これをもつて損害の発生があつたと解して妨げないというべきである。

3  法律上の主張(3)について

原告が本訴で請求しているのは、債務不履行を原因とする損害賠償であるから、その時効期間は五年である。

第三証拠〈省略〉

理由

第一請求の趣旨1の訴の適否

一  原告は、地位協定一八条一〇項に基づく原告の調停申請に対し、被告局長及び被告長官が総理府令所定の行為をなさないのは違法であるとして、その不作為の違法確認を求めているものであるところ、同被告らは、地位協定の右条項に基づく調停手続は抗告訴訟の対象たる処分あるいは裁決にあたらない旨主張するので、まずこの点から判断することとする。

1  抗告訴訟の対象となる処分とは、行政庁の処分その他公権力の行使にあたる行為(行政事件訴訟法三条二項)をいうのであるが、当該行為が右にいう処分に該当するといえるためには、まず第一にそれが行政庁の行為とみることができるものであることを要し、第二にそれが公権力の行使すなわち行政庁がその優越的な地位に基づき権力的な意思活動として行なうような性質の行為であつて、さらに第三としてその行為が個人の法律上の地位ないし権利関係になんらかの影響を与えるような性質のものでなければならないと解される。

そこでまず、調停委員会の行なう調停が、右にいう処分に該当するものといえるか否かについて検討する。

(一) 特需契約から生ずる合衆国軍隊と特需契約請負業者との間の紛争を解決するための調停は、地位協定一八条一〇項により合衆国委員会に付託されるものであるところ、合同委員会は、地位協定二五条によれば、日米両国政府の代表者一名ずつで組織され、地位協定の実施に関して必要な事項を協議するために設置された機関、すなわち日本国政府と合衆国政府との間の協議機関であるとされている。

そしてさらに、〈証拠省略〉及び弁論の全趣旨によれば、日米両国政府は、一九五三年(昭和二八年)四月四日付の契約調停委員会とその調停手続に関する覚書(以下「調停手続覚書」という)に基づき合同委員会において合意に達し、合同委員会は前記の調停を行なうための分科機関として調停委員会を設置し、これに合同委員会の権限を行なわせることとし、調停委員会の組織、権限あるいは調停手続等の細目を定めたこと、それによれば調停委員会は、日米両国政府によつてそれぞれ任命される各四名ずつの委員によつて構成され、特需契約から生ずる紛争に関する事項について、契約当事者の一方からの申請により当事者間の調停を実施する権能を有するが、その調停手続は当事者双方の友誼的な合意により前記の紛争を解決するための手段であつて、調停委員会の作成した当事者に対する勧告も、当事者双方が受諾しなければ効力を有せず、したがつて調停が成立した場合であつても、その効力は当事者の合意のみに根拠をおくものであるとされていること、右の調停手続覚書は、地位協定発効前である「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定」一八条七項に関するものであるが、同条項は地位協定一八条一〇項と同趣旨の規定であつて、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」及び地位協定の発効にともない、地位協定一八条一〇項に関する日米両国政府の合意としてその効力がひきつがれていること、したがつて、地位協定の右条項による調停は、右の調停手続覚書の規定するところによつて調停委員会において現実に運営されていることが認められ、この認定に反する証拠はない。

なお、総理府令は、地位協定一八条一〇項の規定を国内法令に実現するための執行命令として、日米両国政府の前記の合意内容の一部について国内法令の形式において規定しているが、これによつても調停委員会は、合同委員会の分料機関として調停に関しその権限を行使するものであることが規定上明らかである。

(二) そうすれば、調停委員会は、合同委員会の権限の一部を行なう機関であり、したがつて二国間条約である地位協定二五条、一八条一〇項を根拠に設置された日米両国政府の協議機関としての組織及び権能を有するものとして理解されるべきことは明らかであつて、国または地方公共団体の公権力を行使するわが国の行政組織法上の行政機関と解する余地はなく、したがつてこれが行政事件訴訟法にいう行政庁に該当しないことは極めて当然である。

のみならず、調停委員会による調停は、前記のように契約当事者間に合意を成立させるための手段であり、調停委員会の最終的な意思決定ともいうべき当事者に対する勧告も、当事者の合意としての効力を有するにすぎないと解される以上、調停委員会の行なう調停行為それ自体は、行政庁の優越的な地位に基づく権力的な意思活動ということはできず、また個人の法律上の地位ないし権利関係に影響を及ぼすものということもできないのであつて、いずれにしても抗告訴訟の対象たる処分その他の公権力の行使には該当しないものといわなければならない。

2  以上によれば、調停委員会の行なう調停それ自体は、行政庁の処分と解する余地がなく、したがつてこれを抗告訴訟の対象とすることは許されないというべきであるが、しかしそうであるからといつて、ただちに右の調停に関してなされる被告局長及び被告長官の総理府令所定の行為も同様に抗告訴訟の対象たる処分に該当しないということはできないのであつて、この点についてはさらに別個に検討すべき必要があるといわなければならないその理由は、次のとおりである。

すなわち本件に即して調停申請に関する手続に限つていえば、総理府令一二条によれば、被告局長は、特需契約請負業者からの調停申請書を受理し、これを被告長官に送付するとともに、その内容を審査し、必要に応じ実情を調査し、意見を被告長官に具申すべきことが、また同令一三条によれば、被告長官は、被告局長から送付された調停申請書を受理して審査し、必要があるときは現地調査を行なつて、これに調停案を付して調停委員会に提出すべきことが、それぞれ定められている。そして同令六条に、調停申請書が防衛施設局に受理されたときに合同委員会に対する調停の付託としての効力が生ずるものと規定されていることなどからも明らかなように、被告局長らの右の行為が調停委員会の調停手続の一部を構成するものであることは否定しえないのではあるが、しかし他方、被告局長らの行為は、調停委員会が行なう調停行為それ自体ではなく、その準備的な手続ともいうべき申請を受理しこれを調停委員会に進達するまでの行為であつて、しかも、調停委員会自身はこれに直接には関与しておらず、被告局長らがわが国の国内法令たる総理府令に基づきその独自の権限と責任においてなす行為といえるものである。したがつてそうであるならば、調停委員会の行なう調停行為それ自体とは観念的に区別して、被告局長らの総理府令所定の行為を別個に評価し、その処分性について判断することは十分に可能であり、かつ理由があるものということができるからである。

しかも、前記のように調停委員会の調停行為それ自体は、抗告訴訟の対象たる行政庁の処分には該当しないものであり、また外国国家たる合衆国あるいはその機関を相手方とする訴訟にわが国の裁判権が通常及ばないことは、確立した国際慣例に照らして明らかである以上、特需契約をめぐる合衆国軍隊との紛争、あるいはこれについて調停委員会の行なう調停に関連する諸手続のうち、わが国の司法裁判所の審査に服する可能性が残るのは、被告局長らの総理府令所定の行為を対象とする行政訴訟のみであることにかんがみても、右のように被告局長らの行為を調停委員会の行なう調停行為とは区別して、その処分性の有無を考えることは実質的な意義があるということができるのである。

3  そこですすんで被告局長らの総理府令所定の前記2の行為が、抗告訴訟の対象たる処分に該当するか否かについて検討する。

まず、被告局長及び被告長官がわが国の行政組織法上の行政機関としての行政庁であることは明らかであり、特需契約請負業者の調停申請を受理し、これを調停委員会に進達するまでの総理府令所定の行為が、調停委員会の行なう調停行為とは区別して、わが国の行政庁の行為と評価しうるものであることも、前記説示のとおりである。

そこで、被告局長らの右行為が公権力の行使といえるものであり、また個人の法律上の地位ないし権利関係に影響を与えるようなものであるか否かについて検討する。

まず、被告局長らの行為が、その権限の根拠を国内法令たる総理府令におく公法上の行為であることは明らかである。そしてそのうち被告局長の行なう調停申請書の受理と被告長官の行なう調停申請書の調停委員会への提出という形式的手続行為に限つていえば、そこには特需契約請負業者の調停申請を受理し、調停委員会の調停を開始させるためにこれを調停委員会に係属させるという被告局長らの外部に対する公権的な意思決定が存在するのであつて、しかも被告局長らは、総理府令によつて認められた調停申請の受理及び調停委員会への進達を行なう唯一の機関として、右行為を行なうものであるから、これを行政庁の優越的な地位に基づく意思的活動すなわち公権力の行使に該当するものと解して妨げないというべきである。そしてまた、被告局長らの右形式的手続行為によつて調停委員会の調停行為が開始されるか否かということは、わが国の特需契約請負業者の有する調停による紛争解決を期待できる地位、あるいは地位協定一八条一〇項に基づく調停制度を利用する法的権利に影響を及ぼすものであることは明白である。

したがつて、以上によれば被告局長らの右行為は、いずれも抗告訴訟の対象たる処分としての前記要件を満たしていると解すべきものといわなければならない。

なお、調停委員会の行なう調停それ自体は、個人の法律上の地位ないし権利関係になんらの影響を及ぼさないものであることは前示のとおりであり、また特需契約請負業者が調停によつて必ずしも紛争を有利に解決できるとは限らないことは、制度の趣旨から当然である(したがつて被告局長らの総理府令所定の前記2の行為のうち、前示形式的手続的行為以外の意見の具申あるいは調停案の作成という調停の内容にわたる実体的行為は、結局のところ調停委員会の行なう調停行為と一体となりこれに吸収されるものとして、また実情調査等は、その前提となる事実上の行為にすぎないのであつて、いずれにしても個人の法律上の地位に影響を及ぼさないから、これを抗告訴訟の対象たる処分ということはできない。)。しかし、特需契約請負業者の有する調停による紛争解決を期待する地位あるいは調停制度を利用する権利は、二国間条約たる地位協定によつて、この調停制度をもうけ、特需契約請負業者にこれを利用することが認められたものであり、これを受けて総理府令に被告局長らの前示の行為が規定されているものである以上、単なる事実上の利害関係にとどまらず、前示のように法律上の地位ないしは権利関係と解すべきであるといわなければならない。

また、被告局長らの行為が、窮極的には調停委員会の授権に基づきその権限の一部を行使するものであることは、〈証拠省略〉と総理府令の規定内容の対比からも明らかであるが、前記2で説示したように右行為が調停委員会の行なう調停行為それ自体とは区別すべき側面を有するものと解される以上、その側面に着目する限り、これをわが国の公権力の行使であるとする前記結論に何ら不都合はないというべきである。さらに、本件のような不作為の違法確認の訴の対象たる処分あるいは裁決は、法令に基づく申請に対応するものをいうのであるが、本件において調停申請に対応するのは直接には調停委員会の行なう調停ないしは勧告であつて、被告局長らの行為はその準備的手続であり申請に対応するものとはいえないのではないかとの疑問も考えられる。しかし、前示のとおり調停委員会の調停行為自体は抗告訴訟の対象とならない以上、その準備的段階としての被告局長らの行為を、調停行為に準ずるものとして、また特需契約請負業者が調停を利用する権利の行使という意味においての調停申請に対応する独立した別個の処分として解することは許されるというべきである。

4  以上のように、地位協定一八条一〇項に基づく調停申請に関し被告局長らの行なう調停委員会による調停行為を開始させるための前示の形式的手続行為、すなわち被告局長の行なう調停申請書の受理と被告長官の行なう調停申請書の調停委員会への提出は、いずれも抗告訴訟の対象たる処分にあたると解すべきであるところ、被告局長らは総理府令所定の同被告らの行為は行政機関内部の行為であつて、これにつき不作為の違法確認を求めることはできないと主張する。そして、なるほど右の行為のうち被告局長のなす調停申請書の被告長官への送付、意見の具申、あるいは被告長官のなす送付された調停申請書の受理等の行為は、いずれも行政機関内部の行為であつて、これらによつて個人の権利義務に直接の影響を及ぼすことは考えられないから、原告としては最終的な処分を争えば足り、これらを独立して抗告訴訟の対象とすることはできないと解せられる。しかし、その余の行為のうち、前示の被告局長の調停申請書の受理と被告長官のこれを調停委員会に提出する行為は、いずれも前示のとおり調停委員会の調停を開始させるという被告局長らの公権的な意思決定が外部に表示された独立の行為というべきであつて、これを行政機関内部の行為ということはできない。のみならず、仮にこれを行政機関内部の行為と解する余地があるとしても、右行為によつて調停申請をした特需契約請負業者の調停手続を利用できるという法的な利益に影響が及ぶことは前示のとおりであつて、これを抗告訴訟の対象たる処分と解する妨げとはならないといわなければならない。

被告局長らの主張は、いずれにしても失当である。

二  次に、被告局長らは、原告の申請にかかる調停は、原告が契約担当官の決定に対し訴願をした後総理府令八条二項所定の手続をとらなかつたことにより、既に終了しているものであつて、原告には被告局長らの不作為についてその違法確認を求める利益がないと主張するので、以下この点について検討することとする。

1  特需契約をめぐる紛争の処理手続については、一般の民事訴訟は別として、地位協定に基づく調停委員会の調停制度のほかに、合衆国軍隊を代表する契約担当官の決定とこれに対する訴願委員会の裁決の制度があることは、総理府令の規定自体からも明らかであるが、〈証拠省略〉と弁論の全趣旨を総合すれば、訴願委員会は、合衆国の国防省憲章に基づいて国防省に設置され、合衆国政府の法務官の中から任命された委員によつて構成される合衆国の行政救済機関であつて、特需契約をめぐる紛争についての契約担当官の決定とこれに対する訴願委員会の裁決は、合衆国の行政救済制度たる手続であること、わが国において特需契約請負業者が合衆国軍隊と締結するすべての特需契約については、右の訴願制度による紛争処理の規定が一般条項として挿入されていること、右条項によれば、特需契約をめぐつて紛争を生じた場合、特需契約請負業者は、契約担当官に異議申立をしてその決定を受け、さらにこれに不服がある場合には、右決定の受領の日から三〇日以内に訴願委員会に訴願を提起し、その裁決を求めることができる旨が定められていることが認められる。そして、原告が締結した特需契約に右の一般条項が規定されていたことは、当事者間に争いがない。

2  ところで、総理府令四条、五条、八条には、地位協定に基づく調停手続と訴願委員会による訴願手続との関係を規律する規定がおかれているところ、その立法趣旨は、次のようなものと解される。

すなわち、調停手続は、二国間条約たる地位協定に基づく日米両国政府の協議機関によつて行なわれる前示一1のような性質を有する紛争処理の制度であり、また訴願手続は、前示のように合衆国固有の行政救済制度であつて、両者はその本来の職旨を異にする別個の制度ということができるのであるが、他方いずれも特需契約請負業者と合衆国軍隊との間で生じた特需契約をめぐる紛争を解決するということにおいては、共通の目的を有するものであつて、両手続をまつたく別個独立に同時進行させることは、一方の手続で当事者間の紛争が解決されるに至るのであれば他方は無益であり、また両手続によつて異なつた解決がなされたとすれば、その間の調整をめぐつてかえつて紛争を生じさせることも予想され、この意味ではむしろ有害ともいえるのである。そこで、後記の合同委員会における日米両国政府の合意に基づき両手続の進行についての関係を規律し、その無用の重複や混乱を避けるため規定されたのが総理府令の前記条項であると考えられ、以上が右規定の立法趣旨と解される。

3  右の観点に立つて総理府令八条の規定をみると、一項によれば、特需契約請負業者は、調停申請を行なつた後契約担当官の決定があつた場合には、調停の続行を希望するか否かの意思表示をしなければならないと定められ、二項には、調停の続行を求めるときの手続について、三項には、続行を求めないときの手続について、それぞれ定められているのであるが、この場合において、特需契約請負業者が調停手続の続行を求めるには二項所定の手続をしなければならないことは当然であり、この手続がとられない限り、調停手続は、続行することができなくなり終了するものと解すべきである。

すなわちこれを敷衍すれば、調停申請がなされ調停手続が開始した後に契約担当官の決定があつた場合、特需契約請負業者は、この決定に服して紛争が解決したとき、あるいはこれに不服であつてもその上級の行政救済手続たる訴願委員会に対する訴願のみによつて解決を欲するときは、もはや調停手続を続行させる意思がないのであるから、調停不続行の意思表示をさせることによつて調停手続を終了させ(八条三項)、逆に調停による解決を希望するときは、契約担当官の決定についての訴願を提起した後、訴願審査の一時停止を得たうえで調停続行の意思表示をさせることによつて、まずとりあえず調停手続のみを進行させる(八条二項)ことを規定している。したがつて、右規定によれば、以上の場合において調停手続が続行されるのは、契約担当官の決定に対する訴願が係属し、しかもその手続が停止しているとき(すなわち八条二項の諸手続がとられた場合)のみに限られるのであつて、それ以外の場合は、すべて契約担当官の決定あるいはこれに対する訴願によつて紛争を解決すべきものとして、調停手続は終了するものというべきである。そして、このことは同条の規定の前記立法趣旨に加え、(1)〈証拠省略〉及び弁論の全趣旨により、調停手続は、特需契約の一般条項に基づく特需契約請負業者の権利(契約担当官に対する異議申立とその決定についての訴願委員会に対する訴願をいうものと解される。)を妨げず、またこれを失わないための手続を踏む必要性を免除するものではなく、また訴願委員会の裁決がなされた後はもはや調停申請ができないとの合意が、合同委員会において日米両国政府間になされていることが認められること、(2)また、契約担当官は自己の決定を審査する権限を有する訴願委員会の裁決に拘束されうること、(3)さらに契約担当官の決定がなされた後に調停申請することは、総理府令八条二項とほぼ同様の手続による場合を除いて許されないと規定する同令四条、五条との均衡からいつても、右のように解すべきものといわなければならない。

4  原告は、合衆国の機関である訴願委員会の一方的都合による訴願審査の一時停止に調停手続の続行をかからしめることは許されないと主張する。

しかし、調停委員会による調停制度は、二国間条約たる地位協定に基づくものであること前示のとおりであるところ、これを実施するための細目を定めた〈証拠省略〉からも明らかなように、総理府令の右の点に関する規定は、合同委員会における日米両国政府の合意内容に基づいて制定されたものであり、その立法内容の当否はともかく、右規定が条約たる地位協定の条項に牴触する違法な規定ということはできないことが明らかというべきであつて、原告の主張は失当というほかない。

さらに原告は、総理府令八条三項の調停不続行の意思表示がなされないときは、調停手続は終了しないと主張する。

しかし、右規定は、前示のように特需契約請負業者が契約担当官の決定に服するか、あるいは不服があつてもこれに対する訴願手続によつてのみ解決を欲する場合に、決定書受理の日から三〇日以内に調停手続を終了させるための不続行の意思表示をすべきことを定めたものであるところ、右の期間の意味するところは、特需契約の一般条項において訴願委員会に対する訴願の提起は前示のように決定書受理の日から三〇日以内になすべきものとされていることにより、右のように調停続行を希望せず総理府令八条二項の手続をとらない場合は、通常は遅くとも訴願を提起する右期間内には不続行の意思表示ができることになるから、右期間と同じ三〇日を不続行の意思表示をすべき期間としたものと解される。したがつてこの場合は、調停続行を希望する場合の諸手続(総理府令八条二項)に要する期間より早期に右の不続行の意思表示がなされることが期待でき、法律関係をよりすみやかに確定させることができるのである。総理府令八条三項は、以上の趣旨及び目的を有する規定にすぎないのであつて、それ以上に原告主張のように右期間内に不続行の意思表示がなされなかつたことから、ただちに調停手続が終了しないという効果を認める根拠となる規定ではないというべきである。

換言すれば、総理府令八条三項による調停不続行の意思表示がなされなかつた場合であつても、同条二項所定の諸手続、すなわち訴願委員会に対する訴願、所定の期間内の訴願審査の一時停止の申請とその許可、さらには調停続行の意思表示のいずれかを欠く場合には、右のいずれかの手続の欠缺が確定したときに調停手続は終了するのであつて、原告の主張は失当といわざるをえない。

5  以上を本件についてみるに、原告が締結した特需契約をめぐる紛争について、昭和四六年七月二日地位協定一八条一〇項に基づく調停申請書(同年六月三〇日付)を被告局長に提出したこと、右紛争に関して同年七月一六日契約担当官の決定がなされ、同日原告に送達されたこと、原告は同年八月一一日これに対する訴願を訴願委員会に提起したことは、いずれも当事者間に争いがなく、また原告が契約担当官の決定書が送達された後、これに対する訴願の提起のほかには総理府令八条二項所定の手続をなんらとらなかつたことは、原告の自認するところである。したがつて、原告の右申請にかかる調停手続(被告局長が原告の調停申請を受理したことは、弁論の全趣旨により明らかである。)は、原告が訴願委員会に対する訴願の提起がなされた日から一五日以内に訴願審査の一時停止を求めなかつたことにより、右期間である昭和四六年八月二六日の経過によつて終了したものというべく、そうとすれば、右調停手続に関し被告局長及び被告長官の不作為はいずれにしてももはや存在しないからその違法確認を求める原告の訴は、その目的を失い訴の利益を欠くものといわなければならない。

なお原告は、原告が調停を続行させるための所定の手続をとらなかつたのは、被告局長らの誤つた教示等に起因するのであるから、被告局長らが調停手続の終了を主張することは許されないと主張する。

原告の右主張が本件においていかなる意味をもつのかは必ずしも明確とはいえず、また右主張のように解すべき根拠は見出せないのであるが、仮にこれを公法上の信義則違反の主張と解するとしても、前示のように原告の申請にかかる調停手続が終了していることは法的に客観的な事実である以上、原告主張の事実をもつてしても被告局長らが前記の主張をなすことが信義則あるいは正義に反するということはできないのであつて、原告の主張は採用することができない。

三  以上によれば、原告の被告局長及び被告長官の不作為の違法確認を求める請求の趣旨1の訴は、訴の利益を欠く不適法なものであるから、これを却下すべきであるといわなければならない。

第二請求の趣旨2の訴の適否

一  原告は、原告の第二次調停申請に対し被告局長が受理拒否処分をしたとして、その取消を求めているところ、〈証拠省略〉と弁論の全趣旨によれば、原告が主張するところの受理拒否処分とは、「圭自動車販売株式会社にかかる「調停手続続行等要求通知書」について(回答)」と題する被告局長名義の書面〈証拠省略〉による通知をさすものであることは明らかである。そして、〈証拠省略〉と弁論の全趣旨によれば、原告の第二次調停申請にかかる昭和四八年九月七日付の調停申立書は、結局のところ昭和四六年六月三〇日付の前示の第一次調停申請と同一の紛争に関するもので、原告の主張をさらに具体的詳細に論じたものにすぎないのであつて、第一次調停申請の補完をなす書面として理解できるものであつたこと、右書面が提出された昭和四八年九月七日当時は、第一次調停申請にかかる調停手続は前示のとおり既に終了していることが明らかであり、また原告の訴願に対する訴願委員会の裁決もなされていた(右裁決が昭和四八年三月二一日になされ、同年四月三日原告に裁決書が交付されたことは、当事者間に争いがない。)ことにより、この調停手続を続行する余地はまつたくなかつたこと、ところが原告代理人から被告局長らに対し、昭和四八年九月二七日以降調停手続の続行を要求する書面が送付されてきたので、被告局長は、昭和四八年一〇月一一日付の前記の書面によつて原告に対し右要求には応じられない旨回答するとともに、前記の昭和四八年九月七日付の調停申立書を返送したことが認められ、この認定に反する証拠はない。

右認定事実によれば、被告局長のした右回答は、法律上の根拠を有しない単なる事務上の連絡ともいうべき調停手続が既に終了している旨の事実の通知にすぎないのであつて、これによつてなんら法律上の効果を生ずるものではないから、これを抗告訴訟の対象たる処分と解することはできないというべきである。

もつとも〈証拠省略〉によれば、原告は被告局長が右回答をなす前に、第一次調停申請にかかる調停手続の続行ができないときは、前記の昭和四八年九月七日付書面による第二次調停申請を受理すべきことを被告局長らに対し求めていたことが認められるけれども、前認定のように右書面は第一次調停申請の補完をなす書面と理解されるべぎものであるから、被告局長が原告の右要求に直接答えることなく前記のような回答をなしたことは違法とはいえず、したがつて右回答が処分にはあたらないとする前記結論にかわりはないものといわなければならない(付言するに、仮に被告局長が原告に対し第二次調停申請にかかる調停申立書を返戻した行為をとらえ、これを申請の受理拒否処分と解したとしても、前記認定事実と総理府令四条、五条の規定に照らせば、右申請が不適法であることが明らかであつて、その受理拒否処分の取消を求める原告の請求は理由がないことも明白というべきである。)。

なお、原告は、調停申請の時期を制限する総理府令四条は、省令段階の法規で調停申請権を奪うものであつて、有効な規定ではなく、少なくとも本件については適用すべきでないと主張する。

しかし、総理府令は、地位協定一八条一〇項の規定を国内法令の形で実現するためのその執行命令であることは前示のとおりであつて、総理府令四条、五条の規定が執行命令としての範囲を逸脱し、または条約たる地位協定の条項に牴触するものでないことは明らかであり、しかも〈証拠省略〉と弁論の全趣旨によれば、右規定内容については合同委員会において日米両国政府の合意がなされていることも認められ、これを違法と解する余地はないといわなければならない。そしてまた本件において右規定の適用が排除されるべきとする合理的な法的根拠は、原告主張の事実によつてもこれを認めることができず、原告の主張はすべて失当というほかない。

二  以上によれば、原告の被告局長に対する請求の趣旨2の訴は、取消の対象たる処分を欠く不適法な訴であつて、結局却下を免れないといわなければならない。

第三請求の趣旨3の請求の適否

一  原告は、まず原告の調停申請にかかる調停手続が係属していることを前提に、被告局長らの違法な不作為(請求原因4)によつて、原告の損害賠償請求権の実現が不可能となつていると主張するが、右調停手続が昭和四六年八月二六日の経過により終了したものであることは前示のとおりであつて、被告局長らの不作為はもはや存在する余地がなく、右主張が失当であることは明らかである。のみならず、右調停手続が終了するに至つた経緯は、後記のとおりであつて、そこにはなんら被告局長らの違法な不作為はないといわなければならない。

二  次に、原告は、被告局長らの誤つた教示等が原因となつて調停手続が終了し、その結果損害賠償債権の回収ができなくなつたと主張する。

1  そこで判断するに、前示争いのない事実、〈証拠省略〉並びに原告代表者尋問の結果(後記措信しない部分を除く。)を総合すると次の事実が認められる。

原告(当時の代表者菊田淑子)は合衆国軍隊と締結した特需契約を昭和四六年四月二一日付で解約され、これに不満であつたため、その解決を求め関係省庁に問合わせた結果、東京防衛施設局の立川防衛施設事務所を教えられ、同年六月一日同事務所を訪れて紛争の経過等についての説明をした。そして、同事務所において、業務第二係長佐藤正夫らから地位協定に基づく調停制度があることを教示され、これによる紛争解決を求めて調停申請を行なうこととしたが、その際佐藤係長は、右の調停制度が発足した当時の説明会に出席したことはあるものの、実際の調停手続に関与した経験がなかつたので、総理府令の規定を原告に見せながら調停申請の手続を口頭で説明した。原告は、その後も電話により佐藤係長の指示を受け、昭和四六年六月三〇日付調停申請書を作成し、同年七月二日にこれを立川事務所に持参し、英文の特需契約書等の資料とともに佐藤係長に提出した。佐藤係長は、右書類を受理した後これを東京防衛施設局に送付した。他方、原告は、これに先立つ同年五月一二日、契約の一般条項に基づき契約担当官に対する異議申立を行ない、これに対し同年七月一六日契約担当官の決定がなされ、同日原告に送達された。原告は、同年八月一一日右決定に対しさらに契約の一般条項に基づき訴願委員会に訴願を提起した。この間原告は、立川事務所と電話連絡をとつたこともあり、また同年七月及び八月の各下旬には立川事務所を訪れたこともあるのであるが、それらの際は調停手続の進行を問合わせたり、調停手続とは直接には関係のなく合衆国軍隊との間で生じた問題について相談することが主な用件であつて、契約担当官の決定とこれに対する訴願の提起の事実は、明確にそれとわかるような表現内容で佐藤係長らに伝えなかつたため、同人らは右事実を知るには至らなかつた。その後、原告の前記調停申請書に不備があつたため、佐藤係長は、東京防衛施設局からの指示に基づき、同年一一月一五日付の書面により原告に対し申請書を提出し直すよう指示をしたが、同月三〇日になつて原告の締結した特需契約については既に契約担当官の決定があり、これに対して訴願が提起されていることを知り、またさらにその後しばらくして原告が訴願提起をした日付や、訴願審査の一時停止についての申請がされていない事実を東京防衛施設局からの連絡により知るに至つて、もはや原告の申請にかかる調停手続は終了し、続行の余地がなくなつていると判断した。なお、以上の期間を通して、佐藤係長らが原告に対し調停手続と訴願手続との関連についての総理府令の規定を説明し、とりたてて原告の注意を喚起させるようなことはしなかつた。

以上の事実が認められるところ、原告は、契約担当官の決定とこれに対する訴願の提起の際には、その事実を被告局長ら(実際に折衝にあたつた立川事務所の佐藤係長をいうものと解される。)に通知した旨主張し、原告代表者の供述には右主張に沿う部分もあるが、右供述によつても、原告が契約担当官の決定があつた事実を佐藤係長に伝えたときの内容はかなり曖昧であることが窺われ、佐藤係長の理解するところでなかつたと解されることのほか、証人佐藤正夫の証言に照らしても、右認定事実以上のことを認めることはできず、したがつて、右認定に反する原告代表者の供述は措信できないし、他に右認定を覆すに足る証拠はない。

なお原告は、被告局長らは総理府令の規定が存在することをまつたく知らず、そのため原告に対する適切な指示がなされなかつたと主張するが、佐藤係長が調停手続についての実際の経験がなかつたことは前認定のとおりであり、また右各証拠によれば同係長は細かな調停の手続、とりわけ訴願手続との関連について十分な理解を有しないまま原告と折衝にあたつていることが窺われるとしても〈証拠省略〉によれば、同係長の指示によつて原告が作成した調停申請書は、総理府令別記の書式にその文言及び形式が細部までほぼ符合していることが認められるから、同係長が総理府令の規定をまつたく知らなかつたとは到底認められないところといわなければならない。

2  原告の申請にかかる調停手続は、前示のとおり昭和四六年八月二六日の経過により終了したものであるところ、原告は、調停手続が終了した原因と責任は、被告局長らの誤つた教示等にある旨主張する。

しかし、前記認定事実によれば、調停手続が終了したのと一応因果関係があるとも考えられる被告局長ら(実際に折衝にあたつた立川事務所の佐藤係長ら)の行為は、契約担当官の決定とこれに対する原告の訴願提起に際して、総理府令八条二項の規定をなんら説明教示しなかつたことが認められるのみであつて、この事実以上にその際誤つた教示がなされたという事実は、本件全証拠上これを認めることはできない。なお、原告主張の事実のうち請求原因6(二)(3)の事実は、原告代表者の供述中には一部右主張事実に沿うかのような部分もあるが、右供述は前記認定事実に照らして措信するに足りないのみならず、仮に右事実が認められるとしても、それはいずれも既に調停手続が終了した後のことであることが明らかであつて、調停手続の終了とは因果関係が存しないといわなければならない。

そこで、佐藤係長らが右の教示をしなかつたことが違法であるか否かについて検討するに、元来右のような教示をなすべき義務が同係長らに法令上の義務として課せられているとする根拠は存しないことに加え、前記認定事実によれば、同係長らは、調停手続が終了した後である昭和四六年一一月三〇日に至るまで契約担当官の決定とこれに対する訴願提起の事実を知らなかつたのであるから、具体的に教示をなさなかつたことをもつて、違法な義務懈怠とまでは解することはできないといわなければならない。もつとも、訴願手続については総理府令の規定からも制度として当然予想されるところであるから、佐藤係長らとしても、原告に対し訴願制度について説明し、あるいは釈明するなどして、その進行状況を把握し適切な指示をすることは、国民に奉仕すべき公務員として当然望まれるべき態度であり、しかも法律知識に疎い原告としては、そのような行為を当然期待しているのであるから、同係長らがそのようにしなかつたことは、いささか不親切の謗りを免れないといえるところである。しかし、そうであるからといつて、これが違法とまでは解せられないことは前示のとおりであり、その違法を前提とする原告の主張は、結局失当というほかはない。

以上によれば、本件において調停手続が終了したことについての不利益と責任は、帰するところまことにやむをえないこととはいえ原告の法の不知にあるといわざるをえず、被告局長らの責任を追求し、被告国に対して損害賠償を求めることはできないものといわなければならない。

三  したがつて、被告局長らの違法な職務の執行を理由に被告国に対して国家賠償を求める原告の請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がないことが明らかであつて、これは棄却すべきものである。

第四結語

以上の次第であつて、原告の被告局長及び被告長官に対する訴は、いずれも不適法であるからこれを却下し、被告国に対する請求は、理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 内藤正久 山下薫 三輪和雄)

別紙〈省略〉

特需契約から生ずる紛争の調停付託手続等に関する総理府令 (昭和二十九年七月二十一日 総理府令第五十七号)

改正 昭和三五年 六月二三日総理府令第三八号

昭和三七年一〇月二〇日総理府令第六〇号

日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定を実施するため、特需契約から生ずる紛争で、その契約の当事者によつて解決されないものを、合同委員会に調停のため付託する場合の手続等に関する総理府令を次のように定める。

特需契約から生ずる紛争の調停付託手続等に関する総理府令(目的)

第一条 この府令は、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(以下「合衆国軍協定」という。)第十八条第十項の規定により、合衆国軍隊による又はそのための物資、需品、備品、役務及び労務の調達に関する契約(以下「特需契約」という。)から生ずる紛争を、合衆国軍協定第二十五条の規定に基き設置された合同委員会(以下「合同委員会」という。)に調停のため付託する手続等を定めることを目的とする。

(定義)

第二条 この府令において「契約調停委員会」とは、特需契約から生ずる紛争の調停を行うため、合同委員会の分料機関として設置された委員会をいう。

2 この府令において「契約担当官」とは、特需契約の当事者として、合衆国軍隊又は合衆国軍隊が公認し、且つ規制する海軍販売所、ビー・エツクス、食堂、社交クラブ、劇場、新聞その他の歳出外資金による諸機関を代表する者をいう。

3 この府令において「特需契約請負者」とは、契約担当官と特需契約を締結した者をいう。

4 この府令において「決定書」とは、契約担当官が、特需契約から生じた紛争について、当該契約書の条項に基き行つた決定を記載した文書をいう。

5 この府令において「訴願委其会」とは、契約担当官が特需契約から生じた紛争について行つた前項に規定する決定を、当該契約書の条項に基いて再審する権限を有する合衆国軍隊の機関をいう。

(調停申請書の提出)

第三条 特需契約請負者が、その契約から生じた紛争を合衆国軍協定第十八条第十項の規定に基き、合同委員会に調停のため付託しようとするときは、左の事項を記載した別記様式による調停申請書六部を、もよりの防衛施設局に提出し、調停の申請をするものとする。

一 紛争にいたるまでの経過

二 契約担当官との間の紛争に関する争点

三 契約担当官との間の紛争に関する争点に対する主張

四 紛争に関係のある契約書の条項

五 その他必要な事項

2 前項に規定する調停申請書には、契約書の写及び特需契約請負者の主張の裏づけとなる文書その他契約調停委員会が調停を行うに当つて参考となる資料を添付するものとする。

(調停申請書提出の時期)

第四条 前条に規定する調停の申請は、契約担当官が、特需契約請負者に対し決定書を交付する以前に、これを行うものとする。

第五条 特需契約請負者が、訴願委員会に対して訴願をなし、且つその訴願の日から十五日以内に訴願の審査の一時停止の申請を行い、その許可を受けた場合においては、前条の規定にかかわらず、決定書が交付された後においても、当該許可の日から十五日以内に調停の申請を行うことができる。

(調停付託の効力発生の時期)

第六条 合同委員会に対する調停の付託は、第三条に規定する調停申請書を防衛施設局が受理した時からその効力を生ずるものとする。

(調停付託の通知)

第七条 特需契約請負者は、第三条に規定する調停申請書を防衛施設局に提出したときは、直ちにその旨を契約担当官に通知するものとする。

(調停申請書提出後、決定書が交付された場合の特需契約請負者の措置)

第八条 特需契約請負者は、第四条に規定する調停の申請を行つた後、契約担当官から決定書を交付された場合には、直ちに契約調停委員会に対し、防衛施設局を通じてその旨を通知し、且つ文書をもつて調停の続行を希望するか否かの意思表示を行うものとする。

2 特需契約請負者が前項に規定する調停の続行を希望する場合には、当該決定につき訴願委員会に対して訴願をなし、且つその訴願の日から十五日以内に訴願の審査の一時停止の申請を行い、その許可を受けた後、当該許可の日から十五日以内に、当該決定書に対する自己の主張を記載した文書を添えてその意思表示を行うものとする。

3 特需契約請負者が第一項に規定する調停の続行を希望しない場合には、当該決定書を受理した日から三十日以内にその意思表示を行うものとする。

(調停続行の効力発生の時期)

第九条 前条に規定する契約調停委員会に対する調停の続行を希望するか否かの意思表示は、防衛施設局がこれを受理した時からその効力を生ずるものとする。

(期限の延長)

第十条 特需契約請負者が、特別の事由により、第五条又は第八条第二項に規定する期限内に、調停申請書を提出し又は調停の続行を希望する意思表示を行うことができない場合には、当該特需契約請負者は、契約調停委員会に対し、防衛施設局を通じて当該期限の延長の申請をすることができる。

2 前項の期限の延長の申請は、左の事項を記載した期限延長申請書六部を提出して、これを行うものとする。

一 紛争の概要

二 希望する延長期間

三 期限の延長を希望する特別の事由

(適用除外)

第十一条 第四条、第五条及び第八条から第十条までの規定は、当該契約書の条項中に、契約担当官が特需契約から生じた紛争について決定書を交付し又は特需契約請負者がそれに対し再審を訴願することができる旨の規定がない場合には、これを適用しない。

(防衛施設局長の措置)

第十二条 防衛施設局長は、第三条に規定する調停申請書又は第十条に規定する期限延長申請書を受理したときは、直ちに調停申請書又は期限延長申請書それぞれ五部を防衛施設庁長官に送付するとともに、その内容を審査し、且つ必要に応じ実情を調査し、意見を防衛施設庁長官に具申しなければならない。

(防衛施設庁長官の措置)

第十三条 防衛施設庁長官は、前条の規定により送付された調停申請書又は期限延長申請書及びそれらに対する意見を受理したときは、これを審査し、且つ、必要があるときは現地の調査を行い、調停申請書にあつては調停案を、期限延長申請書にあつてはその意見を付して契約調停委員会に提出しなければならない。

第十四条 防衛施設庁長官は、契約調停委員会から調停の結果又は期限の延長の申請に対する決定の通知を受けたときは、これを防衛施設局長を通じて特需契約請負者に通知しなければならない。

附則

この府令は、公布の日から施行する。

附則〔昭和三五年六月二三日総理府令第三八号〕

1 この府令は、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の効力発生の日から施行する。

2 この府令施行前の特需契約から生じた紛争の調停に関する手続等については、当該紛争をこの府令施行後の特需契約から生じた紛争とみなして、この府令による改正後の特需契約から生ずる紛争の調停付託手続等に関する総理府令の規定を適用する。

附則〔昭和三七年一〇月二〇日総理府令第六〇号〕

この府令は、昭和三十七年十一月一日から施行する。

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